イギリス大学院で学ぶ国際協力④〜就活・進学事情〜(前編)

英国サセックス大学大学院に留学されている、生駒知基さんからの寄稿記事4本目(前編)です。
今回は、同じくイギリスの大学院に留学されている日本人の方のインタビューを含めて、大学院卒業後の就活やその後の進学についてご寄稿いただきました。
前編では海外での就活や進路決定をどのように行ったか・その理由などが語られています。海外大学に進学しようとしている方、必見です!


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「海外の大学院に進学している学生ってどのように就活・進学選択しているの?」海外大学院に進学することを考えた人なら1度は考える疑問だと思いますが、実際のところ、日本の大学で学部を卒業して海外の大学院に進学した人たちはどのように就活・進学をしているのでしょうか。

そこで今回は、「イギリスの大学院の学生たちはどのように就職・進学選択をしているのか?なぜその進路を選択したのか?」ということをテーマに、政府系開発援助機関、青年海外協力隊、外資系戦略コンサルティングファーム、総合商社、セカンドマスター(2つ目の修士課程)という多様な進路に進む大学院生の方の声を紹介します。「イギリス大学院で学ぶ国際協力」というシリーズの一環なので、ある程度国際協力に関連のあるキャリアを志している方々にインタビューをしてみました。

前編では、入社予定の企業や進学先について「どのように選考が行われたのか?なぜその進路を選んだのか」ということに対話形式でフォーカスしていきます。

「イギリスの大学院生たちの将来プランは?イギリスでの就活・進学だったからこそ良かったこととは?」後編はこちらから!

今回登場する皆さん

Jさん(政府系開発援助機関)

University of SussexのMA in Poverty and Developmentで貧困と開発を学ぶ。貧困削減と社会保護に興味を持ち、特にエチオピアの社会保護プログラムに関心を持っている。2020年4月から政府系開発援助機関に就職予定。

Oさん(青年海外協力隊)

University of BrightonのMSc Tourism and International Developmentで観光と開発を学ぶ。ジェンダーや女性のエンパワメントに関心を持っており、修士論文ではインドネシアのある村の女性が観光によってどのように影響を受けたかについて研究している。2020年4月から青年海外協力隊員としてモザンビークで農業と観光支援に携わる予定。

Kさん(外資系戦略コンサル)

London School of Economics and Political SciencesのMSc in Gender, Policy and Inequalitiesでジェンダーと社会保障について学ぶ。修士論文では日本の事例を扱い、2018年5月から施行された候補者男女均等法(*)の分析を通して政治にいかに女性の声を反映させることができるか、法律が女性のエンパワメントにどのような影響を与えるのかについて執筆中。2020年4月から外資系戦略コンサルティングファームに入社し東京オフィスで働く予定。

*候補者男女均等法(正式名称「政治分野における男女共同参画推進法」)とは、国会・地方議会の選挙で各政党の候補者数をできる限り男女均等にするよう求める法律で、「日本版パリテ法」とも呼ばれる。

Sさん(総合商社)

University of Sussex のMA in Development Studiesで開発学を学ぶ。難民と開発、教育・ヘルスケアに関心を持っており、大学院では持続可能性やヘルスケアと開発に関する授業を履修していた。2020年4月から総合商社に入社する予定。

Mさん(セカンドマスター)

University of SussexのMA in Corruption and Governanceで汚職とガバナンスについて学ぶ。修士論文ではケニアの汚職をテーマにしている。2019年9月から、ハンガリーの中央ヨーロッパ大学(CEU)の修士課程(MA in Political Science)に進学予定。

イギリスの大学院生はどのように就活・進学を行なっている?

生駒(筆者):

まず、就活・大学院への出願をどのように行ったかというのを聞きたいのですが、どういうスケジュールで行われたんですか?

Oさん(青年海外協力隊)

青年海外協力隊は年間2回、春募集と秋募集があり、私は春募集に応募しました。今年の2月頃募集があって4月に締め切りというスケジュールでした。そのあと5月半ばに書類選考の結果が届いて、6月に日本で面接がありました。面接自体は1回しか受けていません。面接では知識やスキルを見るための技術面接と、人物を見るための人物面接の2種類がありました。私は女性のエンパワメントや観光に関わりたいと思って勤務地を選んでいたので、面接官からは「なぜ女性のエンパワメントに関わりたいのか?」ということを深掘りされました。希望しない勤務地でも良いかという質問もありました。

生駒(筆者):

来年から働くモザンビークは希望していたプロジェクトだったんですか?

Oさん(青年海外協力隊)

それが…最初は希望してなかったんですよ(笑)。女性の地位向上や生活改善やエコツーリズム等に関するベトナムやチュニジアのプロジェクトを希望して応募したんですが、結果的に送られてきたのはモザンビークのプロジェクトでした。大学院で観光と開発を勉強していることもあって面接官が「観光をメインに女性のエンパワメントをやったらいいのではないか」と提案してくれました。私としてはどこの勤務地になっても働きたいと思っていたので、モザンビークのプロジェクトに決めました。

女性のエンパワメントイメージ

Jさん(政府系開発援助機関)

僕が受けたところも似たようなスケジュールでした。僕は今年の2月くらいから本格的に準備を始めて、応募しました。まず4月にロンドンで選考会があったのでそこに参加しました。会社説明会と質問対応・選考の面接がセットになったような選考会で、ロンドン市内の大学で行われました。そのあと5月上旬にスカイプで面接があって、6月に最終面接が東京でありました。

生駒(筆者):

Jさんは最終面接の前に小論文試験があったと聞いたんですが、どのようなものでしたか?

Jさん(政府系開発援助機関)

国内選考の場合は二次面接の時に小論文があるらしいのですが、僕は海外選考で二次がスカイプ面接だったので、小論文は最終面接の前にありました。色について、イノベーションについて、働き方改革についてなどといった5つくらいのテーマから1問選んで30分程度で書く、というイメージです。そのあと少し休憩を挟んで最終面接だったのですが、面接官が4人の理事・役員で人事部長が書記をしていて、物々しかったです。

面接のイメージ

生駒(筆者):

外資系戦略コンサル・総合商社に進む2人(Sさん・Kさん)はどのようなスケジュールだったんですか?

Sさん(総合商社)

僕もOさん・Jさんとほぼ似たようなスケジュールですが、一次面接・二次面接をロンドンキャリアフォーラム(以下、ロンキャリ)で受けました。ロンキャリとは毎年4月ごろロンドンで行われるイベントで、日系企業や日本にオフィスを持つ外資系企業が30社ほどロンドンに来て、説明会や選考会を行います。企業によってはロンキャリの数日間だけで内定を出すところもあるそうです。それで、二次面接までをロンドンで行い、6月に少しだけ帰国して東京で最終面接を受けました。

Kさん(外資系戦略コンサル)

外資系ということもあって私の就活のスケジュールが一番特殊かもしれません。私の場合、去年の11月くらいに応募してスカイプで何度かケース面接(*)を受けました。その後今年3月に日本であったインターンに参加して、インターン後の面接にてオファーをもらいました。

*ケース面接とはコンサルティングファームや一部の総合商社で用いられる面接方式で、「東京大阪間の新幹線で売られているコーヒーの売り上げを上げるには?」といった答えのない問題に対して論理的に考えることを求められる。

ケース面接練習風景

生駒(筆者):

Kさんはインターンではどのようなことをしたんですか?

Kさん(外資系戦略コンサル)

3日間にわたって行われたもので初日は会社の概要やコンサルタントとしてのキャリアとは、という知識のインプットや企業の方々とのネットワーキングがあり、次の日から3人一組でのグループワークでした。お題はとあるテーマパークの長期戦略計画を考えるというものでした。インターン参加者は全体10人中2人が女性で、しかも私のグループに2人とも集まったのですが、テーマパークではカップルなどで女性から誘うことも多くて、長期戦略を考える上で女性の好み・視点というのは必須だと思います。そういった意味で、コンサルティング業のダイナミクスだけではなく、企業における多様性の重要性を感じることができた素晴らしいインターンでした。

生駒(筆者):

なるほど、実際に働かれてからもそうした多様性がもたらすメリットというのは感じる機会があるかもしれないですよね。面白いのは、イギリスで就職活動をしているのに4人ともどこかのタイミングで日本に帰って選考を受けているということですね。この中ではMさんだけがアカデミアの道を続けられるということですが、Mさんはどのように大学院への出願を行ったんですか?

Mさん(セカンドマスター)

僕は今年の1月くらいに出願をしました。最初はPhD(博士課程)に出願したものの、残念ながら不合格の通知が来ました。その代わり、大学から修士課程へ出願書類の転送のお誘いの連絡が来て、奨学金をもらえる可能性もあるということで、とりあえず転送してもらいました。そのあと「面接(interview)」という扱いで10分ほどスカイプで質問を行う時間と、オンラインで政治・経済分野の選択式テストがありました。結果として、授業料免除と(アパート・寮を含む)生活費の補助を受けられることが決まったこともあり、中央ヨーロッパ大学(CEU)の修士課程(MA in Political Sciences)のオファーを受諾しました。

大学イメージ

生駒(筆者):

MさんにとってCEUは2つ目の修士(マスター)ですよね?

Mさん(セカンドマスター)

そうです。今のプログラムがMA in Corruption and Governanceで次がMA in Political Scienceなので2つ取ればMAMAになれる、なんて友達と冗談を言ったりしています(笑)。統計や方法論についても学ぶことのできるプログラムです。あとは、現在のイギリスの大学院とは違ってCEUはヨーロッパ中心のプログラムなのも期待している点です。

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