イギリス大学院で学ぶ国際協力③〜履修した授業の様子〜

英国サセックス大学の大学院に留学されている、生駒知基さんからの3本目の寄稿記事です。

大学院の授業で扱われた、難民カフェが難民に与える影響の考察と、その考察に至るまでの過程や、その授業を通しての学びなどが分かりやすくまとめられています。海外の大学の授業に興味のある方、必見です!!

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こんにちは!だんだんと春っぽくなってきて、晴れの日も増えてきました。サマータイムが始まったおかげで、夜の8時くらいまで明るい毎日が続いています。

今回は、大学院の授業の内容について書いていこうと思います。

授業の概要

今回は先学期(9-12月)履修していた「開発における権力と社会的観点(Power and Social Perspective on Development)」という授業にフォーカスして、イギリスの大学院ではどのようなことをどのように学ぶのかということを見ていきたいと思います。

「開発における権力と社会的観点(Power and Social Perspective on Development)」という長いタイトルで、何を勉強するのだろうという感じですが、学問領域的には政治社会学あたりに分類されるのではないかと思います。内容としても、Identity(アイデンティティ)、Citizenship(市民権)、Power(権力)、Transparency and Accountability(透明性と説明責任)などを扱いました。

毎週木曜日の9:30-13:00にレクチャーとそれに基づくセミナーがあって、毎週金曜日10:00-12:00には、グループワークの時間が設けられていました。この2時間はグループで好きなように進めて良くて、質問がある際に適宜講師を捕まえて質問するようなイメージです。グループワークでは、実際に街中にあるNGO・企業などにインタビューなどを行い、4,000語ほどのグループレポートを書くような課題がありました。

受講生は中東出身の学生と、ラテンアメリカ出身の学生が多かったです。僕は、同じように移民・難民コミュニティに興味を持っている他の学生(キャサリン・ビオレタ)と、イギリス南部の街ブライトンにある移民・難民の方が集まるカフェをテーマとしました。このカフェは、毎週火曜日のお昼に開催されていて、移民・難民の参加者自身が自国の食べ物を料理し振る舞うという特徴があります。3人とも移民・難民の文化に関心があったので、ブライトンで毎週活動しているこのカフェにスポットを当てることにしました。

カフェの様子

Power (権力)とは?

「開発における権力と社会的観点(Power and Social Perspective on Development)」という授業の名前の通り、「Power(権力)」というのが授業を通じた1つの大きなテーマでした。「Power(権力)」と言ってもいまいちピンと来ないと思うのですが、「力関係」と考えると、少しだけわかりやすいように思います。「力関係」は、ありとあらゆる場所に存在していて、例えば上司と部下であったり、先生と生徒であったり、どんな友達やカップルにおいても存在していると言えるのではないでしょうか。国際協力でいうなら、先進国と途上国の関係性であったり、援助する人とされる人の関係であったり…。授業の最初に、講師の先生が言っていた

「Power(権力)というのはどこにでも存在していて、タンザニアの開発の事例でもミャンマーのロヒンギャ迫害の事例でも、至る所に見られる。もちろん、イギリスの中のどのNGOや企業においても見られる。実際にNGOや企業にインタビューを行う中で、Power(権力)がどのように働いているのかを学んでほしい

という言葉が、印象的でした。

グループのメンバー

僕は前述したように、同じように移民・難民コミュニティに興味を持っているキャサリン・ビオレタとグループを組んで、活動しました。

キャサリンは台湾出身の女性で、サセックスに来る前にはカンボジアでNGOのプロジェクト・マネージャーとして1年半にわたり働いていた上、フリーランスのジャーナリストとしてマルタ・スペイン・カンボジアで活動していたそうです。

「インタビューを行う時には、最低2台で録音するようにしているんだ。1台が動かなくても大丈夫なように」

そういってインタビューのたびに、僕のiPhoneでも録音するようにせがんでくる彼女は(笑)、さすがジャーナリストという感じで、インタービュー時の質問の切り込み具合が秀逸でした。また、写真を撮るのも上手く、いつも記事になりそうな写真映えのする光景をシャッターに収めていました。ちなみに、上にあるカフェの様子の写真は彼女が撮ったものです。

ビオレタはモルドバ出身の女性で、サセックスに来る前は10年程度ファシリテーションのワークショップ運営などを行っていたといいます。

「移民や難民のような人と関わる際には特に、調査の進め方、インタビュー方法や許可を得る方法について慎重にならなければいけない」

そう言う彼女は、最初にカフェの運営者に対して連絡を取る際にも、業務連絡的にメールを送ってスケジュール調整をするのではなく、まずは活動日に一般の参加者として参加して様子を見た上で運営者・参加者からの信頼を得て、その上でインタビューの仕方などを考えるべきと言っていたのが印象的でした。

そうした彼女の考え方もあって、僕たちは毎週のカフェに参加し、配膳や皿洗いなどを手伝いながら信頼を得られるように努めました。こうした努力もあって、人手が足りない時には調理に手伝って欲しいと頼まれるような仲になりました(笑)。

グループワークでの学び

僕たちのグループのテーマは、「ブライトンにある移民・難民の方が集まるカフェの中でPower(権力)がどのように働いていて、またどのように移民・難民の方のエンパワーメントに寄与しているのか」ということでした。

2ヶ月に渡り、計5人の方にインタビューを行った結果、「移民・難民の方自身が自分の料理を振る舞うというスタイルが、彼ら自身の文化を誇りに思ったり、提供する側として自分の能力を再確認する機会になっている。それは、このカフェが参加する移民・難民の方をエンパワーメントしていると言えるのではないか」という結論に至りました(もちろん、レポートで書いた内容は他にもあったりもっと複雑だったりするのですが、簡素化してわかりやすくしています)。

参加者の方の料理(ジンバブエ料理)

開発学・国際協力というとどうしても発展途上国社会に目が向きがちだと思うのですが、例えばPower(権力)や力関係のような話は、どこの国やどの社会においても存在していて、そういった視点で物事を見ることによって新しい考察につながる、という発見を得られたのが大きな学びだったように思います。

また、学問的な学びだけではなく、グループワークを通じて学んだこともたくさんあったように思います。例えば、他のメンバーと(特に英語で)協力してレポートを書いたのは初めでだったので、その面白さと同時に難しさにも直面しました。前の人が話した内容を踏まえながら随時調整できるプレゼンテーションとは異なり、文章の場合は流れや構成まで共通認識が取れていないと内容がダブってしまうという難しさがあります。また、固有名詞や名詞レベルでどれを用いるのかというのを合わせておく必要性を感じました。Organisers(運営者)が誰を指しているのか?Participants(参加者)とは誰を指していて、Volunteers(ボランティア)とは何が違うのか?といった細かい話し合いをして、一貫して整合性が取れているかを確認する作業を休みの日に集まって数時間行うことも多々ありましたが、それも含めてグループワークの難しさと面白さについて学べたいい経験だったように思います。

*英語の発言は全て意訳しています。また、登場人物の名前は本人に確認した上で、適宜変更してあります。