イギリス大学院で学ぶ国際協力②〜大学院の授業の様子〜

英国サセックス大学大学院に留学中の生駒さんより、2回目のご寄稿をいただきました。

 

*前回の記事:「イギリス大学院で学ぶ国際協力①~国際協力に興味を持ったきっかけ~」

http://kokusai-k.net/the-trigger-for-becoming-interested-in-international-cooperation/

 

今回は、大学院の授業の様子についての記事です。授業を受けている人だからこそ伝えられる内容になっています!留学をご検討されている方など、ぜひご覧ください

 

こんにちは。

イギリスのサセックス大学修士1年の生駒知基です。開発学・国際協力について学んでいます。12月ともなるとだいぶ寒くなって来て、朝晩には雪と雨の中間のみぞれのようなものが降るような時期になってきました。大学のキャンパスの中央にクリスマスツリーが設置されたのを見ると、「もう冬なんだな」と実感します(先週[12/7に]、点灯しました!)。

 

さて、今回は、大学院の授業の様子について、”日本の大学・大学院との違い”に着目しながら書いていきます。具体的には、

  • イギリス大学院の授業は難しい?
  • 大学院は自分の好きなことを研究する場所?
  • 大学院では指導教員との関係が重要?

の3つについて答える形で、説明していきます。なぜこの3つのトピックかというと、日本の大学・大学院と比べた際に大きく異なっていて、最初はその違いに驚いたのですが、大学院生活を送る中で「こういう制度もいいな」と思えるようになってきたからです。

サセックス大学に設置されたクリスマスツリー

 

そもそも、サセックス大学の開発学って?

「サセックス大学」と聞いてもだいたいの人は知らないと思うのですが(これまで何度も「サセックス大学の修士課程に行く」と言っても「どこ?」と返されたことがあります)、イギリス南部の街ブライトンにある大学です。実は、開発学・国際協力の分野では有名で、毎年のようにQS世界大学ランキングの開発学分野で世界1位の評価を取得しています。ランキングの指標の内訳を見てみるとAcademic Reputationという研究の質の高さが特に売りなようです。

 

ちなみに、「大学ランキングで有名だから選んだ」という声も聞きますが、それと同時に、「研究・教授や周りの学生の質の高さという点で恵まれているサセックスの学生が、発展途上国の恵まれない人々の生活を考えるジレンマに目を向けるべき」といった意見もよく聞くような気がします。

世界大学ランキング 開発学分野

修士課程ということもあり、学んでいる学生のほとんどは既に発展途上国などで働いていた経験がある人ばかりで、「○○国の政府で働いていた」「NGOで2年働いていた」という話をよく聞きます。そのため、年齢的には、20代後半~30代前半くらいが多いのではないのかなという印象です(あくまで予想です!)。

 

国籍的には、僕の所属する開発学修士課程約120人のうち、30人近くがインド人学生、イギリス人学生・日本人学生がそれぞれ10人程度、その他ヨーロッパ・アジア・ラテンアメリカ各国からの学生で、留学生が大半という環境です。アフリカ出身の学生は意外と少なく、数名程度です。「結構日本人の学生多いんだな」というのが最初の印象でした!やはり日本人の方でも、「青年海外協力隊で△△にいました」という方が多いような気がします。国籍の多様性のみでなく、男女比でも多様性に富んでいて、男性:女性が4:6くらいで女性が多く(あくまで感覚値です!)、講師の先生も女性の方が多いです。

 

この夏学期は「Ideas in Development and Policy, Evidence and Practice(開発学概論)」という授業が必修で、その他「Economic Perspectives on Development(開発経済)」「Political Economy Perspectives on Development(開発政治経済)」「Gender, Identity and Inclusion(ジェンダー、アイデンティティと社会的包括)」「Power and Social Perspective on Development(開発における権力と社会的観点)」の4つの授業から1つを選ぶことになっていました。僕が選んだのは、「Power and Social Perspective on Development(開発における権力と社会的観点)」という授業で、グループワークをしながら実際にブライトンなどにあるNGO・企業などの団体の活動に参加し、インタビューを通して団体外部の組織との権力関係・団体内部での権力関係などについて聞き取り・考察を行うというものです。

 

文字で書くとやたら難しく聞こえますが、実際に僕のグループが行なっているのは、ブライトンにある中東・アフリカ系移民が集まるカフェに毎週赴き、ランチを食べながらカフェの主催者や集まっている人々に話を聞くという内容なのでそれほど難しくなく、むしろ楽しいです。

 

①イギリス大学院の授業は難しい?

今学期、「Ideas in Development and Policy, Evidence and Practice(開発学概論)」「Power and Social Perspective on Development(開発における権力と社会的観点)」という2つの授業を履修した感触でいうと、確かに難しいものの学生に対するサポートも充実している印象です。どちらの授業も、レクチャー(2時間)・セミナー(1.5時間)があり、日本の大学・大学院でいうなら講義+ゼミといった感じだと思います。「海外の大学・大学院は授業の予習が大変そう…」という一般的な予想通り、授業の課題はたくさんありますが、一方でサポート面としてワークショップやレポートに対してネイティブに添削してもらえるサポートがあります。

 

授業の課題としては、1つの授業に対して、毎週課題文献として「必読文献」「推奨文献」が指定されていて、「必読文献」は週に50~100ページほど、さらに興味がある場合や課題のレポートを書く際に役立つ「推奨文献」が毎週30~40文献くらいテーマごとにリストアップされています(もはやページ数を数えようという気にもなりません…)。

授業自体の評価は中間レポートや中間プレゼン・期末レポートで行うという点では日本の大学・大学院とも似ているような気がします。そのため、セミナーはあくまで思考を深める場で、評価とは関係ないそうです。やはりセミナーでネイティブ同士の議論がヒートアップして、内容が難しくなったり発言が早くなったりすると付いていくのが大変ですが、ファシリテーターの先生が発言の内容を噛み砕いて解説してくれたり、「非ネイティブの学生も多いので、発言スピードを下げよう」という提案をしてくれるという点では、やりやすいです。

 

サポート面では、毎週のように図書館でライティングやリーディングに関するワークショップがあり、無料で受けられるので、スキルアップを図ることができます。中でも僕が有益だと感じているのが、1対1でネイティブの先生にレポートの添削をしてもらえるサポートです。期末レポートなどについて30分間に渡り文法・構成・引用方法などフィードバックをもらうことができます。僕が利用した際には、「レポートを書く際には主語のIを不必要に避けるのではなく、明確に自分の主張を行う際には使うべき」「レポートの前半・後半で論理的に噛み合わない箇所があるから修正した方がいい」などと、細かいところまで見てどのように改善したら良くなるかまで教えてくれました。このようなサポートも無料で受けられるのは非常にありがたいです。

 

②大学院は自分の好きなことを研究する場所?

日本の大学院との大きな違いとしては、自分の研究を行うかどうかという点があると思います。日本の大学・大学院では、「自分の研究を行い、ゼミはその発表を行ったりコメントをもらう場」という位置付けだと思うのですが、サセックス大学の修士課程では、1年間の修士課程ということもあり秋学期(9~12月)・春学期(2~5月)は授業の履修を行なって修士論文を書く際に土台となる知識を吸収するのがメインで、夏学期(6~8月)に修士論文の執筆を行うという風に明確に分けられています。日本の大学院では一般的に2年間自分の研究を行うと考えると、夏学期の3ヶ月のみの研究というのは非常に短いです。

 

そのため、秋学期の段階では履修している授業の課題文献を読み、レクチャー・セミナーに出席して、中間・期末レポートを書くだけで、自分の興味を深める機会はそれほど多くないように思います。一方で、SDGs(持続可能な開発)・アフリカの農業など様々なテーマに関するワークショップが開かれているので、空いている時間にそうしたワークショップに参加することも可能です。興味があれば深掘りする機会はあるものの、それが必須ではないと言えるかもしれません。

 

③大学院では指導教員との関係が重要?

日本の大学院に進学した友人からよく「日本の大学院では指導教員との関係性が非常に重要」と聞くのですが、イギリスの大学院(特に修士課程)ではそれほど指導教員との関係性は重視されていないように思います。

 

秋学期の段階では、履修している授業の期末レポートごとにその分野の指導教員が割り当てられ、レポート提出前にフィードバックをもらうことができます。また、その他にチューターとして、アカデミック・ライティングやクリティカル・リーディングの仕方、プレゼンテーションの仕方などについて教えてくれる指導教員が1人割り当てられます。そのため、授業のレポートごとの指導教員が2人、その他諸々の内容(もちろんレポートも見てコメントしてくれます)に関する指導教員が1人いるという感じです。上で書いたレポートの添削とは異なり、こちらはより内容面や授業で扱った理論・ケースとどのように絡めることができるかということに対してコメントしてもらえます。

 

例えばレポートで「開発(Development)」という単語を用いているのに定義をしていなかった際には、内容を読んだ上で誰の定義を用いるのが良いか、経済成長が人間開発(Human Development)に必ずしも繋がらないことを主張するのはどのようなデータ・事例を用いるのが良いのかということをアドバイスしてくれます。

 

修士論文についても指導教員を選ぶ必要があるのですが、1つの論文を書くのにフィードバックをくれる存在と考えると、日本の大学院のように指導教員とゼミが重要ということではないのかもしれません。

 

さて次回は、現在履修している授業の内容についてもう少し深掘りしていきます!周りの学生のバックグラウンドなどにも触れながら、授業の内容や進み方について書いていく予定です。